書籍紹介
グローバル化が加速する現代社会において、異なる文化背景をもつ人々と共に生きるためには、単なる「異文化理解」や「多様性の尊重」を超えた実践的な知が求められています。
本書は、ソーシャルワーカーに不可欠な資質とされる「カルチュラル・コンピテンス(文化的力量)」を、理論と実践の両面から総合的に探究しました。
第Ⅰ部では、カルチュラル・コンピテンスの理念を再構築します。
文化差への対応に伴うジレンマ――「どこまで踏み込むべきか」「文化をどのように理解すべきか」――に焦点を当て、ポストコロニアル研究の視点を取り入れつつ、文化的多様性と社会正義を両立させる新たな理論枠組みを提示します。
第Ⅱ部では、台湾の多文化ソーシャルワークの先駆的実践を紹介。
婚姻移民支援、先住民支援、新住民家族サービスセンターの取り組みなどを通じ、制度・地域・専門職が連携しながら展開する共生の実践を描き出します。これらの事例は、日本をはじめアジア諸国にとって重要な示唆を与えるものです。
第Ⅲ部では、文化の不寛容性と対話の可能性をめぐる課題を検討します。
デンマークの「ニカブ禁止法」を事例に、宗教的象徴の排除がもたらす社会的分断を分析し、文化的差異を超えて共に生きるための条件を問います。また、ソーシャルワークにおけるスピリチュアリティの意義を再考し、支援を「技術」ではなく「関係性」として再定義しています。
本書の底流には、「他者を迎え入れる社会とはいかなるものか」という根源的な問いが流れています。
著者らは、日本における技能実習生支援や外国人労働政策、社会的無関心の問題にも目を向け、福祉実践の倫理的役割を多角的に描き出しています。
理論と実証を往還しながら、多文化共生社会の理念を現場の実践としてどう具現化できるかを探究しました。
多文化社会のなかで、「他者を理解すること」と「共に生きること」のあいだには、深い省察と実践が求められます。
本書は、ソーシャルワーカーのみならず、福祉・教育・行政など多様な分野に携わる人々に、新たな視座と対話の契機をもたらすことを願っています。
桂 良太郎(ハノイ国家大学・日越大学客員教授)
ぜひ一人でも多くのソーシャルワークをめざす、若い人々に本書を読んでいただきたい。
本書はまさしくサブタイトルに書かれているように、多文化共生社会(地球村)再生を願う、著者のこれまでの「異文化とソーシャルワーク」に関する研究調査の集大成がいっぱいつまった、重要な本である。
いま日本の未来は、外国人労働者への社会福祉やソーシャルワークの在り方にゆだねられている。 本書の骨組みは著者の紹介文にまかせ、小生からは、とくにこの本の後半に取り上げられている、「ベトナム人技能実習生に対する死体遺棄事件の刑事裁判」(資料)と「マインドフルネスのソーシャルワークにおける活用の可能性」(試論)をぜひとも読んでいいただきたい。
本書は、日本、台湾、スウエ―デンにおけるソーシャルワークの実践を取り上げ、日本における外国人支援の実践についてていねいに概説されている。「カルチュラル・コンピテンス」とはそもそも何か、そして、このキーワードこそ、持続可能な社会変革を実現するために組織や法体系も含め、システムの再構築が必要と訴えている。
あなたの住んでいる地域の外国人への支援施策や制度改革なしに、日本の持続可能な多文化共生社会づくりは達成されない。まずこの本を読んで、自分たちの地域社会で、はたしたどれだけ外国人たちと「共生と寛容(共感)」あふれる成熟したコミュニティづくりを想像から創造するときに、そして多文化共生社会(地球村)再生をめざす皆様に必ず本書はお役にたつことでしょう。
634-0823
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