情報提供
2025年12月12日 中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)
熊本を拠点に外国人支援活動を行っている「コムスタカー外国人と共に生きる会」より、孤立出産をめぐり無罪を求めて争われているグエットさんの裁判について、重要な呼びかけが寄せられました。
当協会といたしましても、その趣旨に深く賛同し、本件が持つ社会的意義を、より多くの皆さまと共有したいと考えております。
本件は、ベトナム人技能実習生として日本で働いていた女性が、外国人であること、技能実習生という不安定な立場に置かれていたこと、そして女性であることが重なり合う中で、妊娠・出産に関して本来受けるべき適切な保護や支援につながることができなかった事案です。
その結果、女性の身体的・人格的権利、すなわちリプロダクティブ・ライツが十分に保障されていたのかが、あらためて問われています。
私たちは、多くの方々にこの現状を知っていただき、同様の事態を二度と繰り返さないために、制度の改善や支援体制の充実に向けた議論と行動を広げていくことが不可欠であると考えています。
本件に関心を寄せ、支えてくださる皆さまの温かいご理解とご協力を、心よりお願い申し上げます。
裁判および関連する取り組みについての情報を、以下にご紹介いたします。
グエットさんの死体遺棄被告事件で、最高裁判所第二小法廷は、2025年12月2日付で、上告趣意書の提出期限を2026年1月13日火曜日 までと、指定してきました。担当は、2023年3月24日にレー ティ トゥイ リンさんの死体遺棄被告事件逆転無罪判決を宣告した同じ第二小法廷となりました。(リンさんの判決宣告した当時の裁判官4名のうち3名が残っています。)
これまでの池上 遊弁護士、島翔吾弁護士、石黒大貴弁護士の3名の弁護士に林陽子弁護士を新たに加えた弁護団弁護士4名は、2026年1月13に日提出期限まで上告趣意書を作成して提出を準備しています。それと共に、グエットさんの最高裁の上告審をリプロダクティブ・ジャステイス訴訟(チラシ参照)と位置づけ、グエットさんの無罪判決の実現を目指して支援団体・支援者側も以下の取り組みを進めていきます。下記データなどの取り組みや拡散をお願いします,
2.3については、第一次締め切り2026年12月31日までとします。
東京での行動に参加可能な方は、ご参加ください。
みなさん、こんにちは。
私は グエン・ティ・グエット と申します。自分の子どもの遺体を遺棄した罪で有罪判決を受けました。
今日、この文章を書いているのは、これまで私を支えてくださった皆さまに、どうしても感謝の気持ちを伝えたかったからです。
日本という遠い国で、一人きりで不安の中にいたはずの私が、こうして立っていられるのは、皆さまが寄り添い、励まし、手を差し伸べてくださったおかげです。皆さまからいただいた温かい言葉や思いは、つらく苦しい心を何度も救ってくれました。
本当に、心の底から感謝しています。 どうか、これから始まる最高裁判所の上告審でも、引き続き力を貸していただければ幸いです。
私は、自分の無実を信じています。 そして、私と同じように困難に立ち向かっている外国人技能実習生が、正当な権利を守れる社会になることを心から願っています。 どうか、私が真実を取り戻し、再び前を向いて生きていけるよう、これからも応援していただけたらうれしいです。 心より感謝を込めて。
2025年12月12日 Nguyen Thi Nguyệtt
2025年11月24日 中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)
熊本を拠点に外国人支援活動を展開している「コムスタカー外国人と共に生きる会」より、上記事件に関する重要なご連絡をいただきました。当協会といたしましても、その趣旨に深く賛同し、多くの皆さまにご理解とご支援を賜りたいと願っております。
本件は、ベトナム人技能実習生として日本で働いていた女性が、外国人であること、技能実習生であること、そして女性であることという複合的な立場におかれた中で、適切な保護と支援を受けることができず、結果として本来守られるべき**女性の身体的・人格的権利(リプロダクティブ・ライツ)**が著しく侵害された事案です。
本事件は、技能実習制度が抱える構造的課題、外国人女性の権利擁護、そして日本社会におけるジェンダーと人権の問題を問い直す極めて重要な社会的テーマを含んでいます。
多くの皆さまに現状を知っていただき、制度の改善と再発防止に向けた取り組みを広げていくことが不可欠です。
皆さまの温かいご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。
2025年11月4日(火曜日)の福岡高裁のグエットさんの控訴審判決は、「控訴棄却」(原審の有罪判決を認める)の不当判決でした。グエットさんは、この判決を不服として、最高裁判所に上告する意思を表明し、弁護団弁護士が、2025年11月6日上告申立書を福岡高裁へ提出し、受理されました。
11月4日控訴審判決当日は、午後12時30分の門前集会に約40名が参加して行われました。午後1時からの傍聴券配布に54名(当日一般傍聴席34席、他は司法記者席とグエットさんの付添2名の特別傍聴人)が並びました。午後2時からの判決宣告公判は、テレビの頭取りのあと、3名の裁判官(平塚浩司裁判長、中山登裁判官、檀上信介裁判官)のうち平塚裁判長により有罪判決が読み上げられ、午後2時40分頃閉廷いたしました。(RKB福岡放送のインターネット記事参照)
※2025年11月4日 福岡高等裁判所の死体遺棄被告事件判決の内容は、RKB詳報をご参照下さい。
その後、午後3時から福岡県弁護士会館2階のホールには約60名の参加で判決後の報告集会が開かれました。弁護団弁護士3名を代表して池上遊主任弁護人による判決内容の説明と批判、福永俊輔西南学院大学教授と田中雅子上智大学教員の判決へ批判的コメント、グエットさんからの判決を来た時の思いや「私は子どもを捨てていません。この判決は受け入れられない。最高裁判所へ上告する」という決意表明を日本語とベトナム語で発言しました。その後、グエットさんの裁判を支援している支援団体から、技能実習生権利ネットワーク・北九州、ユニオン北九州の末永氏、コムスタカー外国人と共に生きる会の佐久間氏、同事務局員 海北氏の発言、会場の参加者からの数名の発言をへて、閉会となりました。(報告集会での寄付金は2万1186円でした。)
判決後の報告集会終了後、福岡県弁護士会館会議室で、最高裁判所の上告審へ向けて、弁護団弁護士と支援者の会議に約25名の参加がありました。この場では最高裁へ向けて、起訴及び一審、控訴審とも敗訴している結果を踏まえ、グエットさんの無罪の主張に新たにリプロダクテイブ・ジャステイス(性と生殖に全般に関する社会的正義)や女性差別の観点を入れた上告趣意書を作成するために女性弁護士に依頼して弁護団拡充すること、2)最高裁への無罪署名、妊娠出産経験のある女性や医療関係者、その他の方から意見書を募り集めること、3) 寄付金を集めること、また、弁護士からは孤立出産の状態が分かる動画の作成など提案がありました。早急に具体化できるか検討することになりました。
11月4日の控訴審判決は、2023年3月24日の最高裁判決(リンさんの刑事裁判の)の「死体遺棄罪の隠匿が成立するには、その態様自体が習俗上の埋葬と相入れない処置といえるか否かの観点から検討する必要がある」との枠組みで判断していますが、無罪を主張する弁護団弁護士の主張をすべて退け、1審判決及び検察官の有罪主張に追随した不当判決でした。これは、居室内で 死産した女性が、「段ボール箱に遺体を入れて棚の上に置いていたら、死体遺棄罪の隠匿に当たらず」無罪となり、「ゴミ箱の中に遺体をおいていたら死体遺棄罪の隠匿に当たる」という、居室内のどこに置くかで、死体遺棄罪の「隠匿」が成立するか否かを判断しており、また、死産した当日(グエットさんは、死産後は大量出血で何度も気絶している)の女性の行為と意思を問題にして判断しています。
ここにみられる「習俗上の埋葬と相入れない措置」か否かの判断が、孤立出産(死産)した女性へすべて責任を負わせ犯罪視し、「公共の秩序維持」としての妊娠・出産を体験しない男性の支配的価値観に基づいて判断されています。グエットさんの刑事裁判は、妊娠・出産という性と生殖に関する社会的差別や不公正に関する異議申し立てであり、その価値観の転換を求める闘いです。
2025年11月4日控訴審での有罪判決(控訴棄却)を受けて、同年11月6日福岡高等裁判所へ上告申立書を提出しました。グエットさんの最高裁判所の上告審へ向けて、現在3名の男性の弁護団弁護士に加えて、新たに林陽子弁護士(東京第二弁護士会、アテナ法律事務所)が、弁護団弁護士に加わっていただけることになりました。
林陽子弁護士は、元国連女性差別撤廃委員会委員長で、数多くの労働事件で女性労働者の差別や人権侵害の救済へ向けて弁護活動をなされてきました。
今後4名の弁護団弁護士の体制で、グエットさんの刑事事件に女性差別やリプロダクテイブ・ジャステイス(性と生殖全般における社会正義)の観点を加えた訴訟として、最高裁判所での逆転無罪を目指していくことになります。
リプロダクテイブ・ジャステイス(性と生殖全般における社会正義)については、人種、民族、宗教、国籍や在留資格、年齢、性的指向、階級、障害や健康保険の有無など、複数の障壁が重なって、性と生殖の権利が行使できない不公正な現状を是正していく概念
1990年代の米国で黒人女性フェミニストたちが自らの経験と闘争から生み出した概念。白人中心のリベラル・フェミニズムが掲げてきた「選択の自由」だけでは、貧困、差別、暴力の下で生きる女性たちの現実を説明できないと批判。生殖の自由の議論を「個人の選択」から「社会の構造の転換」へと発展させた。
※参考文献
『リプロダクティブ・ジャスティス: 交差性から読み解く性と生殖・再生産の歴史』(ロレッタ・ロス&リッキー・ソリンジャー著、申琪榮&高橋麻美監訳、林美子・新山惟乃・大室恵美・花岡奈央・ミーシャ・ケード訳 2025人文書院)
最高裁判所が上告を棄却せずに受理するには、控訴審判決に「憲法違反」、「(最高裁)判例違反」の事由がある場合(刑事訴訟法第405条)か、「控訴審判決を破棄しないと著しく正義に反する認めるとき」(刑事訴訟法第411条)のいずれかです。最高裁判所にグエットさんの有罪の控訴審判決を破棄させ無罪判決を実現させるには、弁護団弁護士の法律論や専門家の意見だけでなく、多くの市民や労働者の意見を最高裁判所の裁判官に伝える必要があります。
刑事裁判では、控訴審判決宣告後に最高裁判所に上告(14日以内)した場合には、福岡高等裁判所から最高裁判所に訴訟資料が送付され、最高裁判所から上告趣意書の提出期限の通知が上告人及び弁護人に送付されてきます。その時期は、上告後から2ヶ月から3ヶ月以内といわれ、グエットさんの上告審では、2026年1月上旬から2月上旬までの期間中に提出期限が決められてくると思います。
グエットさんの弁護団弁護士は上告趣意書を作成して、最高裁判所へ提出する時に、学者などの専門家の意見書とともに、妊娠・出産経験者や医療関係者、その他の方々のグエットさんの事件に関する一般意見書、最高裁判所への無罪署名を併せて提出します。なお、上告趣意書の提出は郵送ではなく、弁護団弁護士の代表と支援者らで、直接、最高裁判所へ提出する行動と記者会見、東京での集会などを実現させたいと考えています。多くの方々や団体のご協力をお願いします。
コムスタカ(外国人と共に生きる会)よりの情報提供がありましたので当協会もその趣旨に賛同し、ホームページでもご案内します。
2025年5月27日 中島 眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)
ベトナム人技能実習生グエットさんは、2024年2月、知人宅で突然出産を迎えましたが、残念ながら死産でした。彼女は大量出血と体調不良の中、ようやく見つけたビニール袋に赤ちゃんの遺体を入れ、しゃがみ込んでいた近くにあったごみ箱の中に一時的に置きました。その後、帰宅した知人に病院へ連れて行かれ、診察時に警察へ通報され、死体遺棄罪で起訴されました。
彼女の行為は、助けを求める余裕もない極限状態であったにもかかわらず、2025年3月7日、福岡地方裁判所は懲役1年6ヶ月・執行猶予3年の有罪判決を言い渡しました。グエットさんは、この判決を不服として3月14日に福岡高裁に無罪判決を求めて、控訴しました。福岡高裁(刑事第3部 裁判長裁判官 平塚浩司)は、控訴趣意書(控訴理由などを記載したもの)の提出期限を5月16日として、グエットさんの弁護団弁護士は、期限同日に約60ページに及ぶ控訴趣意書を福岡高裁に提出しました。そして、控訴審第一回公判が、以下の期日で開かれます。
634-0823
奈良県橿原市北越智町322番地 社会福祉法人うねび会
ぽれぽれケアセンター白橿内、ASCA 事務局 (代表 桂良太郎)
TEL: 0774-28-6511
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